チーズを つくって 水田風景を守る
チーズを つくって 水田風景を守る
File.15
佐賀県嬉野市ナカシマファーム
発酵食品は、
仕事や地域活性のカギになる
「日本人が、田園風景をいいなあと思う気持ちは簡単になくならない。ならば酪農と水田を結び付けて、最終産物を米ではなくチーズにしたら水田を守れるんじゃないか」。
佐賀の田園風景の中に生まれ育った中島大貴さんは、いったん地元を離れて建築学を学びますが、その後、故郷に戻って家業の酪農を継ぎました。建築学で学んだ空間デザインやまちづくりを農業分野で実践したいと思ったからです。「建築でもまちづくりでも、困難な条件を克服できたときこそ面白い」。
周囲の水田で育てるのは米のための稲ではなく、茎や葉が飼料に向く飼料用の稲。それを発酵させて牛のエサにし、出てきた糞尿は堆肥にして水田に戻し、また稲を育てる。この循環の中で人間は乳をもらってチーズをつくる。これがナカシマファームの掲げる「GRASS to CHEESE」の理念です。
フレッシュタイプから熟成タイプまで多彩なラインナップの中でも特に注目を浴びるのが、ホエイ(乳清)を使ったブラウンチーズ。本来なら捨てることの多いホエイを生かすことで、SDGsにつながると共感を得たのです。
「持続可能というなら、酪農と水田の循環とチーズづくりの共存こそふさわしいかもしれません。チーズのような発酵食品は、むかし祖母が野菜を漬物にしたような生活の知恵、言い換えれば暮らしの問題解決が詰まったものだとわかってきてとても広がりを感じています」。
目指すは、地域のためになるようなチーズづくりです。