Event Report

日本の銘チーズが一堂に会する
Cheese Fun! Fan! Fun!
開催リポート
2024.10.19、20

今、日本のチーズがとてもおいしい。それもそのはず、作り手は北海道から沖縄まで全国に350軒を超えているのです!  そんな渦を体験できるのが2年に一度開催される「Japan Cheese Awards」と「日本の銘チーズ百選」というチーズイベントです。
この2つのイベントを合わせてCheese Fun! Fan! Fun! 今年も国内最大級の国産チーズイベントが盛大に開催されました。2日間の熱き様子をお届けします。

Cheese Fun! Fan! Fun
  • 日時 : 10月19日(土)、20日(日) 各11:00〜17:00
  • 場所 : 東京ドームシティ プリズムホール

前売りチケット完売!
“チーズ”ときいて、トキメク老若男女

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2024年現在、日本国内北海道から沖縄まで、ナチュラルチーズをつくっている工房は350軒を超えています。地元の新鮮なミルクで作り、地元消費中心のものもあれば空港や都会に送られ知名度を上げているチーズもあります。

日本が南北に長く、山、海辺、中山間部と多種多様な地形があるおかげでチーズの種類も多種多様。そんな日本中のチーズを集め、一人でも多くの人に食べて知ってもらいたいというのがCheese Fun! Fan! Fun!の趣旨です。

  • 全国各地のチーズの魅力を知り、学んで体験して楽しむ Fun!
  • 国産チーズに出逢い、生産者・審査員の想いを知り、より好きになる Fan!
  • 最大規模のイベントで全国各地のチーズを試食して、自分なりのチーズの楽しみ方を見つける Fun!

そんな場所に、2日間で4500人の来場者を迎えました。

当日券も準備しましたが、あっという間に売り切れ。「チーズ」の魅力の広がりに、改めて圧倒される主催者たちでした。

審査風景を見ながら入場
「チーズの審査って、初めて見たわ」

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10月19日土曜日、晴れ、11時。いよいよ開場です。

期待に胸膨らませた来場者たちが笑顔で列をなして続々と入ってきます。

屋内に入って最初に目にするのが、凛とした空気の中、人が静かに座ってチーズを穴が開くほど見つめているチーズの審査風景。これがJapan Cheese Awards 2024の一次審査です。多くの方に関心を持ってほしいと今年、初めて公開にしました。

審査員は1年以上の訓練を受けたチーズ評価のスペシャリストたち。3、4人ずつがグループになり、それぞれ担当部門のチーズを、磨き上げた五感と知識を働かせて審査します。グループごとにディスカッションも重ねてここから部門賞を選出。さらに翌日にはそれら部門賞のトップ群の中から日本一、つまりグランプリが選出されるというわけです。

審査エリアを抜けると、広々とした空間にカラフルなパネルが並び、ステージの上にはリボンが掛けられた大型チーズが待っています。さあ、Cheese Fun! Fan! Fun!の始まりです。

オープニングセレモニーは「チーズ開き」
日本チーズのファンになってほしい

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NPO法人チーズプロフェッショナル協会(C.P.A.)が日本のチーズの応援を始めたのは2009年のこと。展示試食会「日本の銘チーズ百選」というイベントを開催したのが始まりです。

続いて2014年には日本のチーズコンテストである「Japan Cheese Awards」をスタート。それから10年、チーズのプロ集団として、日本のチーズの発展と実力を確信し、一層の飛躍を期待し応援すればこその2大企画としてここまで続けてきました。

ステージに立ったCPA会長の坂上あき氏は「こんなに大勢の方々を迎えることができて、感極まっています。2020年、2022年ともコロナの影響で制約の多い開催でしたが、今年はやっと、生産者の方々と語り合いながらチーズの試食をしていただける会となりました。ぜひ、生産者の思いを持ちかえって、日本のチーズのファンになってください」とあいさつ。

続いて、紅白のリボンが掛けられた前回Japan Cheese Awards2022のグランプリチーズ「フロマージュ・ド・美瑛」がステージ中央に。その生産者、美瑛放牧酪農場の小熊章子さんをはじめ全国有数のチーズ職人が左右からリボンを引いてチーズを‘開き’ます。その一部は来場者の皆さんにもふるまわれました。

無料エリアは情報の宝庫。
子どもたちはくつろぎ、大人たちは脳に栄養補給

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カラフルな空間には何があるのでしょう。

まず、日本のチーズ工房を地方ごとに色分けして紹介。Japan Cheese Awardsに出品された371種の全国チーズ情報も壁一面に貼られています。

別のパネルには、生産者の意気込みやPRポイントなどが書かれた「生産者交流カード」もぎっしり。お気に入り工房を探して数枚、抜き取る人もいれば、カルタ取りのように端から端まで集めて帰る人もいます。

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一方、タイプ別チーズのレプリカを置いて、それぞれのつくられ方、味わい、食べ方、ワインや飲み物との相性などていねいに解説しているコーナーもあります。「あ、そういうことだったんだ」「これ、やってみよう」とチーズの楽しみが広がるヒントの宝庫です。

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休日の開催とあって、子ども連れのファミリーも次々に入場してきます。幼いころからしっかりチーズを食べて育っている令和の子どもたちは「チーズ?好きっ!」と即答です。レプリカのチーズをそっとつつきながらも、様々な形のチーズの原形を目にするのはここでしかできない食育かもしれません。

協賛会社が差し出すキャラクターチーズやシールを貼って学べるシートをもらうと、キッズエリアに移動。子どもたちはチーズを頬張りながらお絵描きやシール遊びでリラックスし、幼子を連れたパパママたちも一息ついていました。

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チーズファンやSNSユーザーのために用意したフォトスポットも人気でした。SNSの投稿を見たフォロワーの方々は驚いてくれたでしょうか?

いざ、おいし~い !!の喧騒の中へ。
試食してFun!

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200種以上のチーズが試食できるのが「食べて楽しむFunコーナー」。1日午前・午後の2部入れ替え制で、2日間で計4回分のチケットはすべて完売でした。すでにお目当ての工房や銘柄がある方もいれば、はじめて巡り合うチーズに期待満々の方もいました。

場内ではまず、ニコニコしている5歳の女の子にインタビュー。「いっぱい食べたよ。チーズはピザで食べることが多いけど、今日の一番のお気に入りはさけるチーズ。すごくおいしかった。」。そばにいたお母さんに聞くと「我が家はよく牧場に行くんです。おいしい牛乳とアイスクリーム、そしてチーズ。チーズはそういうところで買うからほとんどが国産ですね」と。

Instagramで情報を知って来たという20代カップルは、楽しそうにチーズを口に運んでは写真を撮り合っていました。「いつもはチーズと言えば粉チーズか、モッツァレラくらい。でも今日はいろんなチーズがたくさん食べられそうだから、ぜひ行こうって」

娘に誘われ、即決で来たという60代ご夫婦。「国産においしいチーズがあるのは知ってましたよ。僕は各県のアンテナショップで買うんですよ。日本酒にワイン、ウイスキー。なんにでも合わせちゃうな」「うちは食後にいただくことが多いのね。ヤギのチーズも国産はクセがないから食べやすいわよね」

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2時間の試食タイムは、終始大賑わい。作り手に「どのチーズがおすすめですか」と問いかけ、そこから生産者の話も始まります。皆、気軽に言葉を交わし合い、笑顔の交流は熱を帯びていきます。「こんなに食べられたら大満足だなぁ」という声も聞こえました。

飲み物の協力出展もあったおかげで、知らない人同士も軽く情報交換。「あそこの、食べました? いいですよ」。おいしいものは人をつなぎます。忙しい中、全国各地からチーズを持ってご参加くださった生産者たちも、若手が先輩から励ましの言葉をもらったり、修行先が同じだった中堅同士が旧交を温めたりと、日本チーズの活気は閉会時間を迎えてもなお、絶えることがありませんでした。

振り返れば、
あ、ステージが楽しそう

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ステージは、カラフルな展示物のある無料エリアの一画にあります。歩き回るのに疲れたら、ステージ前に座ってスクリーンに映し出される全国の生産者たちの紹介ビデオを見るのもひとつ。楽しいスケジュールも詰まっています。

初日の19日の目玉は、冬場の人気チーズ料理「アリゴ」作りのチャレンジ体験です。来場者の中から3人の方に「混ぜてはぐーんと伸ばす」を経験してもらいました。

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2日目のお楽しみは、チーズ王選手権というクイズ大会。ハイレベルチーズの生産者、おしゃれなチーズ料理家、チーズ学習中の学生、キャリア十分のレジェンドたちがそれぞれ2名ずつでチームを組んで様々なクイズにチャレンジ。優勝はなんと? やっぱり? レジェンドチーム。優勝賞品はオープニングセレモニーで‘開いた’フロマージュ・ド・美瑛でした。

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2日間を通して何度も繰り返されたのが「Japan Cheese Awardsってなに?」の説明でした。食品としての品質を、ブラインドテイスティングで評価する。その目的のための手法や国産チーズの注目ポイント、さらには世界からどう評価されているか、といった情報も披露され、一般の方々にも世界の中でいかに評価されている日本チーズかということを意識していただけたと思います。

このほか、簡単料理や協賛各社によるチーズ普及、地域ごとの乳製品文化向上への取り組み、食育活動など、思わず聞き耳を立てる内容の濃いプログラムが続きました。

2024年のグランプリ 決定
「どーしてもこの賞が欲しかった!」

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2日間の締めは、なんといってもJapan Cheese Awards2024の入賞者発表です。厳選に行われた審査結果は大きくステージスクリーンに表示されます。部門ごとに銅賞、銀賞、金賞と進んで、ときに「該当なし」の文字に会場から小さなため息が漏れることもあります。

そして、クライマックスは、これら各部門の金賞群から、特別審査員が選ぶグランプリ2024の発表です。

ステージ前の席は、エントリーした生産者たちで埋め尽くされています。一瞬、息をのんで緊張の空気に包まれます。ドキドキ、ドキドキ…。「グランプリは、タカラのタカラ!」と発表があるや、チーズ工房タカラの斉藤愛三氏は、両手を掲げて壇上に上がりました。会場から大きな拍手が沸く中、数年前から父を積極的に応援する長女の木の実さんも続きます。

壇上で斉藤さんは「私たちが大切にしているのは大地を感じるチーズであること。そしてでき上ったものを皆さんと分かち合うことができること。それがチーズの最大の魅力です。そのチーズがグランプリをいただけることにたくさんの方に感謝を伝えたいです」とあいさつしました。

実はこのチーズ、2018年に続いて2度目の受賞です。それでも「どーしてもこの賞が取りたかった」という斉藤さん。それは、自身、同じチーズでも日々、より深く掘り下げているし、このJapan Cheese Awardsの審査がどれほど真剣になされているか知っているだけに、今、6年前以上に掘り下げたものを出したつもりだから、と言います。

全力でつくり、いっそう深みを極めていく作り手と、そのチーズを見守り応援し、厳しく評価していくチーズのプロたちの相互信頼がつくり上げていく日本チーズの品質。この2日間はその一幕が示されたような時間だったかもしれません。

これ、これ。
おいしいチーズ、買って帰ろう!

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おいしいチーズに出会ったら、大切な家族やあの人にも食べさせてあげたい、というのが心情です。会場出口の手前には、いくつものチーズ販売店が並びました。

栃木県那須の作り手グループ「那須ナチュラルチーズ研究会」の他に、チーズはもちろん乳製品を使ったお菓子なども扱う販売店が2店出店し、それぞれ2日続けてほぼ完売の大盛況でした。また一般社団法人日本チーズ協会による国産チーズや日本の酪農応援に対する理解促進の声掛けなど、真剣に耳を傾ける来場者も多く、スタッフの顔には達成感の笑みが広がりました。

日本の未来のチーズと酪農を思う

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いま日本の食糧問題は、酪農に代表されるようにたくさんの課題を抱えています。でも難しいことより、まずは日本のチーズのおいしさ、楽しさを肌で感じてほしいと願うCPAをはじめとする関係者の思いは同じです。そして、今回それはかなり達成されたと言っても過言ではないでしょう。

生産者の顔が見える。この方々がこんなにも真剣に自然環境も、動物のことも、チーズ製造の技術のことも考えながら、日本人にとっておいしいチーズをつくろうとしていると肌で感じてもらえたなら、きっと2年後、日本のチーズはさらにおいしくなり、このCheese Fun! Fan! Fun!はいっそう盛り上がることでしょう。そして、ここで知った「近くの生産者」のところへ、皆さんがいっそう足を運び、つながりを濃くできれば、さけるチーズが好きな今の子どもたちも将来、ここで見た、もっともっと多様なチーズの姿を求め、追いかけることになるでしょう。

  • 主催 : NPO法人チーズプロフェッショナル協会(C.P.A.)
  • 後援 : 農林水産省
    〈令和6年度国産チーズ競争力強化支援対策事業(独立行政法人農畜産業振興機構)〉
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