Event Report

世界で認められる国産チーズ・
知られざる魅力と至福のひととき
World Cheese Awards 2025成果報告会
2025.11.18

2025年秋、日本中から集められた精鋭チーズ48品は、スイスの冷蔵庫で静かに出番を待っていました。他にも世界46カ国から集まったチーズが5000個以上。これらすべてが俎上に載せられ、3日間に及ぶコンテストを経て、日本は22品の、内容の濃い入賞を果たしました。その凱旋報告会の様子をお伝えします。

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    日時: 2025年11月18日(火)
    会場: GOOD CHEESE GOOD PIZZA日比谷 
    東京都千代田区有楽町1丁目1-2
    東京ミッドタウン日比谷2F
    主催: NPO法人チーズプロフェッショナル協会(C.P.A)
    後援: 独立行政法人農畜産業振興機構
    (令和7年度国産チーズ競争力強化支援対策事業)

第一幕日本のチーズ力、世界との交流を報告します

世界の審査員が日本チーズに高得点

チーズ伝統国の代表格ともいえるスイス。その首都ベルンで開催されたコンテストで全体数の1%にも満たない存在の日本チーズが、今年も数多く入賞しているというニュースは、報告会の開始を前に、すでに関係者の中で沸いていました。
1年に一度、国を変えて開催される「World Cheese Awards 」は世界で最も権威のあるチーズコンテストの一つです。第37回を数える今年は11月13日(木)から11月15日(土)の3日間で、46カ国から5,244品のチーズが登場するという過去最大規模になりました。
日本は、C.P.A.が事務局を務める国産チーズブランド化推進委員会から、国内17の都道府県より40工房48品(その他、本補助事業外が3品)の国産ナチュラルチーズを出品。
その結果、TOP14を含むSuper Gold賞2品、Gold賞1品、Silver賞12品、Bronze賞7品、計22品(補助事業外含む)が入賞し、中でもSuper Goldの1つ養沢ヤギ牧場(東京)の「養沢ヤギチーズ」は世界のTOP14に選ばれました。

世界レベルの日本のチーズを、おいしく知ってもらうために

開会は司会の関谷亜矢子さんの一声から始まります。「世界で認められる国産チーズ・知られざる魅力と至福のひとときへご来場いただきまして、誠にありがとうございます」
会場は、東京の真ん中で、新鮮な生乳から毎日チーズをつくり提供するピッツァ・ダイニング「GOOD CHEESE GOOD PIZZA日比谷」。ガラス越しに日比谷公園の緑も見えます。

メディア関係者の前には試食用の「WCA出品チーズ7品」が並んでいます。さらに今年はこのあと、チーズを活かしたイタリア料理7品も楽しんでもらいながら耳を傾けてもらおうという段取り。会場中央にはスイスに渡ったチーズ全48品がずらりと姿を現し、来場者を入場第一歩目から視覚で圧倒します。主催者の「日本のチーズを、五感すべてで受け止めてほしい」という意気込みが感じられる空間づくりです。
坂上あきC.P.A会長からは「日本のチーズを国際舞台に持って行く取り組みは2018年から行っています。おかげさまですでにチーズ関係者やこのコンテストに来る人々には日本のチーズの実力が十分に知られているのに、日本の消費者には、このコンテストのすごさも、日本チーズの素晴らしさも、まだまだ知られていません」「今日は国産チーズを料理にしたものも楽しんでいただき、一人でも多くの方に魅力を堪能して、発信していただきたい」とあいさつがありました。

乾杯は、ホエイレモネードで

まず、各テーブルに運ばれてきたのは黄色いドリンク「ホエイレモネード」。ホエイ(乳清)はチーズを作るときにできる副産物で、たんぱく質やミネラル、ビタミンがたっぷり含まれています。良いミルクを余すところなく活用したいとの思いから、5日間漬け込んだ自家製レモンシロップと合わせて、この日が初お目見えです。
「かんぱーい」とグラスを口に運ぶと、爽やかですっきりとした酸味が、喉をすうっと流れていきます。かすかな甘みにひんやりとした感触も相まって、さっそくミルクのマジックに引き込まれて行くようです。

試食用のチーズは北海道産をはじめ千葉、長野、岡山、宮崎、と全国から集められました

正方形のパックに詰められたチーズは試食用。日本各地から取り寄せたというラインナップには、「チーズはもはや北海道だけじゃないんだ」と、日本中に広がるチーズづくりの実力を披露したいという主催者のメッセージが込められています。

コンテスト会場の最終審査映像で響く「Japan!」

WCA2025の審査風景

さて、まずは現地での様子を約1分40秒にまとめたダイジェスト動画の放映です。コンテスト会場の最終審査で「Japan!」という声が響き、「養沢ヤギチーズ」がスポットを浴びるシーンでは、誰もが目がくぎ付け。臨場感を感じる一瞬でした。
今回、生産者の代表としてスイスで審査員も務めた有限会社NEEDSの磯部公児(いそべ こうじ)さんが語ります。「聞いてはいましたが、何千ものチーズが110のテーブルにずらりと並ぶ風景は、それは圧巻でした。と同時に、審査員としてこの黄色いエプロンをつけたとたん、とてつもない責任を感じましたね」。

審査は1テーブルに約45個のチーズが並び、それをそれぞれ3人の審査員で審査します。「外観5点」「食感5点」「香り5点」「マウスフィーリング(味わい)20点」で計35点。その点数によってGold、Silver、Bronzeが決まります。さらにその中でトップになったものがSuper Goldとなります。つまり5,244品のうち110品がSuper Gold、その110品の中に養沢ヤギ牧場の「養沢ヤギチーズ」と乳ぃーずの物語。の「雪子」と、2つの日本のチーズが入りました。
さらにその110個のチーズの中から、14名のスーパージャッジ(最高審査員)が各自のベストと思うチーズを選びます。これが世界のTOP14と言われるチーズで、ここに選ばれたのが「養沢ヤギチーズ」というわけです。

WCA2025 国産チーズ受賞結果はこちら

これ、絶対すごいやつ・・・。
世界の審査員が賞賛

この日、急きょ呼ばれた養沢ヤギ牧場(東京)の堀周(ほり いたる)さんにマイクが向けられます。この日も朝、ヤギのチーズをつくってから駆けつけたそうです。
「(受賞の知らせは)夜中、寝ている時にメールが来て、そのあとお電話いただいたんですが、寝起きで、はあ・・・と。でも、じわじわ実感がわいてきて、家族と、これ、ぜったいすごいやつじゃん、て。でもまだ実感が・・消化しきれてない感じです」と、コトの大きさに戸惑っている様子でした。
『テクスチャーや外皮の美しさ、シルキーでクリーミーな質感、酸味の絶妙なバランスにより、とても華やかな印象で衝撃を受けました。今回のグランプリには惜しくも届きませんでしたが、日本のチーズの品質はもっと高く評価されるべきです』という審査員のコメントは、堀さんだけでなく、日本のチーズ関係者の多くに勇気と誇りを与えてくれました。
これに続いて、坂上会長からは、「ハード系からフレッシュ系まで、昨年以上に上位に入賞した印象です」とコメントが足され、さらに海外審査員と交流した磯部氏からは「日本のチーズテクニックは抜群だ、あとは独創性をと言われた」とか、今大会でグランプリを取ったつくり手のPius Hitz氏(工房名:Bergkäserei Vorderfultigen)の「最終的に大事にしているのはパッション(情熱)だ」という言葉も紹介されました。

第二幕国産チーズが美味料理になって登場

北海道、栃木、長野、宮崎のチーズにそれぞれ地元素材を組み合わせて国産×国産のプラトーです。
「GOOD CHEESE GOOD PIZZA」ならではのフレッシュモッツァレラには東京・清瀬のバジルをそえ、ピッツァには国産チーズ5種を融合。このピザが会場では特に高評価でした。

国産チーズ×国産素材×シェフの
インスピレーションの7品目

今回、GOOD CHEESE GOOD PIZZAとのコラボメニューは7品です。大きな皿が皆さんの前に登場すると、会場にざわめきが起こります。

詳しい料理の説明は配られていますが、作られる過程から美味しさは始まっています。
出来立てモッツァレラのジューシーさ、蝦夷鹿の上にこんもりのる泡立てた長芋、その上にそっと置かれる極薄の熟成チーズ「槲プレミアム」。午後の部では、早めに入場した個人メディアの方々が、いち早くカウンターに集まりシャッターを切っていました。

各人に料理が整うと、チーズ提供者を代表して、チーズ工房那須の森の山川 将弘(やまかわ まさひろ)さん、 GOOD CHEESE LABORATORY チーズクラフトマン 貞光 信哉(さだみつ しんや)さん、 GOOD CHEESE GOOD PIZZAシェフ 梅村 雅俊(うめむら まさとし)さんに、坂上会長が話を聞き出します。

坂上

酪農にもチーズづくりにも携わっている立場で、国産チーズの魅力をどう見ていらっしゃいますか

山川

ミルクを出す牛は、その土地、土地の草を食べています。だからこそ、日本チーズはここにあるように本当に多種多様に生まれてくるんだと思うんです

坂上

では山川さんの地元である那須ならでは、ということはなんでしょう

山川

やはりお客様(首都圏)と生産地の近さですかね。だからお客様にも親しんでもらいやすいんじゃないかと思っています

坂上

今回はスイスも行かれましたね

山川

スイスは産業と文化がつながっていました。意義のあることだなと思いました

坂上

東京のど真ん中でチーズづくりをしていらっしゃる貞光さんはどうですか。コンセプトとか意義とか、お聞かせいただけませんか

貞光

僕たちは東京産の搾りたてのミルクからイタリアのようなモッツァレラなどフレッシュチーズをつくっています。牧場に行かなくても新鮮なつくり立てチーズをおいしいと感じてもらえれば、牛のことや酪農のことにもだんだん関心を持ってもらえるんじゃないか。そう持って行きたいと思っています

坂上

今回はこちらの梅村雅俊シェフのセレクトでチーズをお料理にしていただきました。シェフにとってチーズはどんな位置づけですか

梅村

今回は素敵なチーズに肌で触れながら料理ができたことに感謝しています。イタリア料理でチーズの存在は当たり前ですが、今回は国産の、それも熟成チーズまで扱ったのは初めてでした。生産者を知ってストーリーがわかると良さが分かって身近に感じられますね。

坂上

今回のお料理への思い入れは?

梅村

国産+国産に加え、それぞれのチーズの産地に焦点を当てました。栃木のチーズにはとちおとめを、北海道のチーズには蝦夷鹿、あるいはジャガイモ、長野のブルーにはそば粉を使ったクッキーを組み合わせるなどですね。このうちのいくつかは、この後しばらく当店で、国産チーズ応援フェアとして提供する予定です

最後に再び山川氏。「今日は、こうやって自分たちがつくったチーズが料理になって食べていただくシーンにつながる会に参加できてとても意義のある、良いシーンであり、いい取り組みだったなあと思います」
また梅村氏は「国産チーズは個性的でおいしくもあるのですが、量が揃わないと安定してメニューには載せられないこともあって・・・・。そこがどうしても海外産に頼りがちになる点でもあるんです」と困った表情を見せます。
坂上会長はこれらを受けて「スイスでのチーズは、日本での米だと聞きました。それほど食べている国とは比べられないですが、日本でも、チーズがあるとちょっと贅沢な食事で楽しいひと時になると思います。チーズはモノ消費ですが、こういったシーンを楽しむコト消費としてもぜひ多くの方に、伝えていただけたらと思います」と結びました。

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