チーズで至福のひとときを
今年スイスで行われる
World Cheese Awards2025
出品チーズの魅力をご紹介
長野で見つけた!
世界に挑むチーズたち
世界で評価が高まる国産ナチュラルチーズ。
日常に“小さなご褒美”を届けてくれる
存在でもあります。
今回は、冷涼な気候を生かした工房が点在する
長野で、3つの工房を訪ねました。
長野県佐久市 ボスケソ・チーズラボ
猫をイメージした
遊び心あふれるチーズで世界へ。
是本健介さんが営むボスケソ・チーズラボは、欧州の伝統製法をベースに地元の酒蔵や温泉水など“信州の恵み”を取り入れたユニークなチーズが特徴です。三毛猫カラーの「KARAMATSU Mike」や、看板猫をモチーフにした「KARAMATSU Chatora “GURA”」など、遊び心あふれるラインナップは全国的にも知られています。
世界大会「World Cheese Awards」には過去4度出場し、ブロンズ賞を2度受賞。2年前のノルウェー大会では審査員を経験し、海外と国内の嗜好の違いも実感しました。以降、海外でも通用するコンテストに向けての味わいを目指し、「その答え合わせが今回の大会」と意気込みます。今回の大会では“余韻の長さ”にこだわった「KARAMATSU Chatora “GURA”」で再び挑みます。
是本さんのおすすめの食べ方!
そんな想いが詰まったチーズについて、是本さんはこう語ります。
「見て楽しく、料理しても楽しめて、食べても楽しめる。日常の延長線上にある“ちょっとした贅沢”や“ちょっとしたご褒美”の場面で味わってほしい」
好きな食べ方を聞くと、「そのまま食べるのと、とろける手前まで火を入れて温めるのが好き。肩ひじ張らず、自分らしいスタイルで気軽に楽しんでほしい」と笑顔を見せてくれました。
長野県東御市 チーズ工房カプレット
循環型の農と食で紡ぐ、
健やかなヤギチーズ
果樹園を営む「果実の森」が始めた工房で、リンゴやブドウ、桃、梨を栽培しながらヤギを飼育。搾りたてのヤギ乳を使い、規格外の果物や酒粕を飼料に取り入れるなど、食の循環を大切にしています。
チーズづくりを担うのは中村佳美さん。ボスケソ・チーズラボで学んだ技術を活かし、フレッシュなヤギチーズ「ネロカプラ」で2024年のWCA銀賞を受賞しました。今年は同じチーズで再挑戦し、さらなる高みを目指しています。
中村さんのおすすめの食べ方!
「ヤギの飼料からこだわった美味しいミルクが私たちの価値。そこから生まれるチーズは、嫌な匂いではなく“良い香り”として感じてもらえるように。ヤギミルクの甘みや、やさしい味わいが伝わるよう心を込めています」と語る中村さん。
「ネロカプラ」のおすすめの食べ方は、「そのままが一番おいしいですが、蜂蜜をかけたり、クッキングシートを敷いてスライスを1分電子レンジで加熱してカリカリにしても美味しい。人が集まるときや特別な日、お土産などのシーンで楽しんでほしい」と、ヤギチーズの魅力を教えてくれました。
母娘二人三脚でヤギチーズ作りに励みます。
長野県東御市 アトリエ・ド・フロマージュ
自家製チーズと絶景が楽しめる
話題のおでかけスポット
1982年創業の老舗チーズ工房。浅間連山や八ヶ岳を望む東御市に位置し、特にブルーチーズは国内外で高く評価されています。2014年のJCAグランプリ受賞を皮切りに数々の賞を獲得し、2021年には「翡翠」がWCAで世界45ヵ国・4,079品の中から国内唯一ベスト16入りを果たしました。2025年春にリニューアルした敷地内には、レストランやカフェ、ショップを併設。「森のチーズテラス レストラン」ではチーズフォンデュやドリア、カレーなど約40種類のメニューを展開し、日常にチーズを取り入れる“プチ贅沢”な楽しみ方を提案しています。
塩川さんに聞く!ブルーチーズの魅力とは
ヨーロッパに負けない本格ブルーチーズを目指し、日々研究を重ねているのは、この道18年のチーズ職人・塩川和史さん。ナチュラルチーズに出会ったのは小学生の頃。5年生でカマンベール、6年生でブルーチーズに出会ったという原体験を語ってくれました。「同級生は“ブルーチーズは食べられない”と言っていたが、自分は最初から好きだった。だからチーズづくりを始めるとき、“同級生に食べさせられるものをつくろう”と思った」と笑います。最後に「例えば月に5回チーズを食べるなら、そのうち1回は日本のナチュラルチーズを食べてもらって魅力を知ってもらえればうれしい。つくり手としては、日本人の味覚に合わせ、甘み・旨味・塩気のバランスを追求している」と国産ナチュラルチーズへの思いを語ってくれました。
塩川さんのおすすめの食べ方!
おすすめのペアリングは、長野県小諸市のマンズワイン「ソラリス 千曲川 信濃リースリング クリオ・エクストラクション」(白・極甘口)。「ヴィナリ国際コンクール2023」で最高得点賞を獲得した実力派で、「世界で認められたチーズとワインが同じ地域に揃うなんて奇跡のよう」と塩川さん。「ブルーの塩気が甘口ワインと最高に合う」とも語ってくれました。さらに「ステーキにのせる」「お餅にのせて焼く(のりで巻いて、隠し味に醤油をかけても美味しい)」など家庭で手軽にできるおすすめの楽しみ方も紹介してくれました。
ちょっと贅沢な時間をチーズとともに
共通して“日常に寄り添うご褒美”という魅力を持つ信州チーズ。
ひと口で広がる味わいは、忙しい日々をふと立ち止まらせ、食卓に小さな贅沢を運んでくれます。
WCAという国際舞台に挑み続ける存在でありながら、
暮らしを豊かにしてくれる身近な存在でもあることが魅力です。
今回ご紹介した3工房のさらに詳しい背景や、チーズを楽しむ多彩な旅のアイデアは
CREA WEB「World Cheese Awardsにも出品!世界も認める日本チーズの“いま”を知る長野チーズトリップへ」
でご覧いただけます。
世界と日常、そして“ちょっと贅沢な時間”をつなぐチーズの魅力。ぜひ味わってみてください!
CREA WEB 2025年10月20日公開記事より抜粋
文 田辺千菊 写真 山元茂樹